Stock Analysis
デービッド・アイベンは、『ボラティリティは我々が気にするリスクではない。我々が気にかけるのは、資本の永久的な損失を避けることである』。 事業が破綻するときには負債が絡むことが多いので、企業のリスクの高さを調べるときにバランスシートを考慮するのは当然のことだ。 太平洋セメント(東証:5233)は負債を抱えている。 しかし、この負債は株主にとって懸念事項なのだろうか?
なぜ負債がリスクをもたらすのか?
負債は、事業が新たな資本やフリー・キャッシュ・フローで返済に窮するまで、事業を支援する。 最悪のシナリオでは、債権者への支払いができなくなった場合、企業は倒産する可能性がある。 しかし、より一般的な(それでも痛みを伴う)シナリオは、低い価格で新たな株式資本を調達しなければならず、その結果、株主が恒久的に希薄化することである。 もちろん、成長資金を調達するために負債を利用する企業も数多くあり、そのような場合にも悪影響は生じない。 企業の負債水準を検討する際の最初のステップは、現金と負債を合わせて検討することである。
太平洋セメントの負債額は?
下の画像をクリックすると詳細が見られるが、太平洋セメントの2024年6月末の有利子負債は3,781億円で、1年前の4,065億円から減少している。 ただし、現金は866億円あり、純有利子負債は2,916億円となっている。
太平洋セメントのバランスシートの強さは?
直近の貸借対照表を見ると、1年以内に返済期限が到来する負債が3,731億円、それ以 後に返済期限が到来する負債が3,731億円ある。 一方、現金は866億円、12カ月以内に支払期限の到来する債権は2,044億円ある。 つまり、現金と(短期)債権の合計より負債の方が4,553億円多い。
この赤字額は同社の時価総額4,119億円を上回るため、株主は子供が初めて自転車に乗るのを見守る親のように、太平洋セメントの負債水準を注視する必要があると思われる。 仮に、現在の株価で増資による負債返済を余儀なくされた場合、極めて大きな希薄化が必要となる。
私たちは、純有利子負債をEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)で割った数値と、EBIT(利払い前・税引き前利益)がどれだけ容易に支払利息をカバーできるか(インタレスト・カバー)を計算することで、企業の収益力に対する負債負担を測定している。 したがって、減価償却費の有無にかかわらず、利益に対する負債を考慮する。
太平洋セメントのEBITDA純有利子負債比率(2.2)は緩やかで、負債に関しては慎重であることを示している。 また、EBITが支払利息の1,000倍というのは、負債が孔雀の羽のように軽いことを意味している。 喜ばしいことに、太平洋セメントのEBITは、オーストラリアのボブ・ホーク元首相が庭のグラスを飲み干すよりも速く伸びており、過去12ヶ月で1,185%の増加を誇っている。 有利子負債を分析する際、バランスシートが重視されるのは明らかだ。 しかし、太平洋セメントが今後健全なバランスシートを維持できるかどうかを決めるのは、何よりも将来の収益である。 プロがどう考えているか知りたい方は、アナリストの利益予測に関する無料レポートが面白いかもしれない。
なぜなら、企業は紙の利益では負債を支払えないからだ。 つまり、EBITがフリーキャッシュフローにどれだけ裏付けられているかをチェックする価値がある。 過去3年間を考慮すると、太平洋セメントは全体としてキャッシュ・アウトを記録している。 フリー・キャッシュ・フローが信頼できない企業にとって、借金ははるかにリスクが高いので、株主は過去の支出が将来フリー・キャッシュ・フローを生み出すことを期待すべきである。
当社の見解
太平洋セメントのEBITからフリー・キャッシュ・フローへの転換には神経質になっている。 例えば、金利カバー率やEBIT成長率は、同社の負債管理能力に自信を与えてくれる。 上記のあらゆる角度から見ると、太平洋セメントは負債を抱えるため、ややリスクの高い投資であるように思われる。 すべてのリスクが悪いというわけではなく、それが実を結べば株価のリターンを押し上げることもあるが、この負債リスクは念頭に置いておく価値がある。 負債水準を分析する場合、バランスシートから始めるのは当然である。 しかし最終的には、どの企業も貸借対照表の外に存在するリスクを含みうる。 例えば、 太平洋セメントの注意すべき兆候を1つ挙げて みた。
それでもなお、堅固なバランスシートを持つ急成長企業に興味があるのであれば、当社のネットキャッシュ成長株リストをご覧いただきたい。
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